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トークショー 「CSデザインの過去・現在・未来 -1」(ダイジェスト 後編)2010年03月10日

永井一正(グラフィックデザイナー/CSデザイン賞審査委員長)
内田繁(インテリアデザイナー/CSデザイン賞審査員)
萩原修(デザインディレクター)  中川幸也(中川ケミカル代表取締役)

前編に引き続き、後編をお届けします。

前編に引き続き、後編は第8回からの受賞作品になります。


【第8回】1994年


 

(永井)これは、建築家の妹島さんが手がけたガラス面のサイン。カッティングシートのタイポグラフィと向こうに透ける建築とが完全にマッチしたもので、こういうふうに建築に使われだしたのは、これが最初ぐらいでしたよね。

 

(内田)サインをやりましたってレベルで無く、これ自体がそのまま建築になっちゃてる。実はね、だんだん建築素材になっていくぞっていう予感はしてたんです。あと、この影が建築そのものと一体化している。そもそも、妹島さんの建築って軽やかでしょ。その軽やかさをより強調した感じ。建築はここまでいっていいんだよってメッセージを送ってるようなところもあったんじゃないですかね。

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【第9回】1996年


(永井)これは、イッセイミヤケさんのウィンドウ。色がすごくきれいですよね。

 

(内田)きれいなウィンドウと内部とのバランスが、ものすごくよく出来てる。ショーウィンドウの作り方が実にシンプルできれい。グラフィカルなものと立体的なものが合体してるんですよね。

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【第10回】1998年


 

(永井)これは、銀座の資生堂本社のウィンドウ。CSデザイン学生賞の審査員もしている工藤青石さんの作品。時間の経過と光を積極的に取り入れて、カッティングシートの特性を効果的に使った、最初の作品だと思うんです。

 

(内田)カッティングシートが積層した状態になっていて、これをだんだん剥がしていったんですよね。

 

(中川)実は、カッティングシートは、当初から剥がせるってことを概念に置いてたんです。剥がして糊が残らないって言うのは、最初の頃、糊の世界では難しいテーマだったんです。スピーディーに剥がせて糊も残らないっていうカッティングシートの特性を上手く使っていただいてるんで、私共は非常に嬉しい。

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【第11回】2000年


 

(萩)2回連続で工藤青石さんが受賞した、資生堂のウィンドウです。

 

(中川)ミラーをうまく使ってるんですよね、これ。

 

(永井)工藤さんは元々パッケージデザイナーだから、やはり立体性とか時間性をすごく考慮に入れてデザインしますね。

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【第12回】2002年


 

(永井)仮囲いって言うものは、特に大きなビルの工事中ともなると、長期間にわたって街の美観にすごく影響するわけです。ですから、仮囲いが味気ないものであったり、つまらないものであれば、工事中の間、街全体がつまらなくなる。そこに、菊竹雪さんが、平面なんだけど立体性を感じる不思議なイリュージョンみたいなものを持ち込んだ。これは非常に新鮮で、この頃から、グラフィカルな要素が加わった仮囲いが登場してきた。

 

(中川)街の汚いところ、面白くないところを何とかしなくちゃいけないって言うのが、ずっとCSデザイン賞のテーマだったんですよ。

 

(永井)マークやロゴが入ってる完全なサインって言うのは別ですけど、それぞれ優れたデザイナーがやってるものが必然的にデザインの良さで大賞になってるわけで。彼らは、やっぱり街の景観を十分に考慮している。カッティングシートっていうのは、ある意味で諸刃の剣で、使い易いけれども下手に使うと街の美観をかえって損なう。中川社長が、カッティングシートを使う以上は、街の景観に危惧するべきだと考えたことから、このCSデザイン賞が生まれたわけです。回を重ねる毎に、やっぱりこういうものが街をきれいにするんだって言うひとつの見本にもなり、それがカッティングシートの使い方の指南になっていったという気がするんですよね。ですから、そういう優れたデザインを検証することによって、カッティングシート自体も質が上がり、方向性が出てきて、それが結果的に街の美観にも反映していったっていう感じがしますね。

 

(内田)こういうものは、環境に関わるものだから、節度の問題があると思うんです。いいデザイナーって言うのは、ちゃんと節度を持ってますからね。

 

(中川)しかし、どんなに頑張っても一定期間になったら剥がしてしまうわけだから、作家の方も、少し思い切ったことをやっても大丈夫ってことですか?

 

(永井)ええ、ただ下手するとどぎついものになりがち。菊竹さんあたりが権威者になって、ここまで芸術性の高いものを生み出したことで、その他の人達も意識するようになってきたということだと思います。それは、やっぱりCSデザイン賞のひとつの功績なんじゃないでしょうかね。

 

(中川)そうおっしゃっていただけると、とっても嬉しいです。

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【第13回】2004年


 

(永井)日本グラフィックデザイナー協会(JAGDA)会員のグラフィックデザイナーがデザインした、様々な商品を販売する一週間の催しのフロアサイン。非常に大きな面積で、白地に赤の大胆なタイポグラフィや造形が圧巻でした。

 

(内田)デザインや建築では、スーパーグラフィックって言う手法があって、壁面や天井を、一気にイラストレーション等で埋め尽くしてしまうようなヤツが流行りましたよね。1960年代の末ぐらいかな。でも、それがもっと爽やかに展開されてる感じ。一週間という限られた期間だから、非常に大胆にやれてるね。365日こうなってたらきついけど。ディスプレイデザインの面白いところは、そこ。ある限られた時間だけをポンと輝かす技術って言うんですか‥。

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【第14回】2006年


 

(永井)広尾の交差点の少し横にある商業ビル。建物全体がガラススクリーンに覆われ、その全面にすりガラス調のシートが貼られた洗練された現代的な外観が目を引きます。ところどころ開いてるところから見える、瀟洒な白いバルコニーや非常階段もリズミカル。昼間見てもきれいなんだけれども、夜は建物全体が白く発光して、ものすごくきれい。ビルそのものに、表皮のようなものを被せて、そこに色々な工夫を凝らしながら一体化していくという試みが始まったんじゃないでしょうかね。

 

(内田)これこそ、さっきのスーパーグラフィックじゃなく、カッティングシートが正にマテリアルとして機能してきた例。こうなってくると思っていたんですよ。貼り替えも可能であるっていう状態の建築だよね。だから、あんまり恐れなくてもいい。

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【第15回】2008年


 

(永井)これは、イタリアンジェラートの店なんですけど、非常に格調があってジェラートの店とは思えない。アーチ型とか直線とか、本来なら違う素材で作ってあるものをカッティングシートでやった為、壁面が非常に軽やかです。カッティングシートとガラス面と影というものが三位一体となっていて、非常にうまいカッティングシートの使い方で、インテリアとしての完成度をもたらしてると思いますね。

 

(内田)これは実にうまい。ヨーロッパのこの手の物のメタファーがしっかり出てますよね。アーチと腰壁の構成っていう、ある種伝統的なものを扱うのにすごく向いてるんですね。なんかおいしそうな感じもするじゃないですか。開けると分かるんですけど、扉は上までいっぱいのガラス扉なんです。だけど、途中でアーチになってる。それをカッティングシートでやったという、この軽やかさ。実にうまい手法です。

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【全体を振り返ってみて】

 

(萩)お二人は、仕事柄、グラフィックとインテリアという異なる観点で見てると思うんですが、CSデザイン賞の26年の軌跡をそれぞれどう見ているか、ざっと解説していただけますでしょうか。

 

(永井)最初の頃は、ソニーの壁面だとか大きなスペースで、あくまでグラフィックデザインとしてのグラフィック処理にカッティングシートを使ってましたね。80年代のCIブーム、コーポレートアイデンティティの一環として、視覚的な統一感っていうのを、看板等あらゆるもので飾った時代。そういうのも、カッティングシートの普及により拍車をかけていったと思うんです。しかし、その後立体に伸びていって、建築・インテリア・グラフィックが三位一体になったところにカッティングシートが生かされていく。最初グラフィックが強かったのが、だんだん環境に流されて、建築やインテリアとの一体感のようなものが出てきたという推移があるんじゃないですか。時代を追って見ると、時代のデザイン的な特徴だけじゃなくて、経済成長とか環境を含めた時代思考の変化というものを感じます。だから、本当のCSデザイン賞というのは、ある意味デザインを通した時代の表現になってるってこと。それは、もうすごい大きなことです。

 

(内田)非常に見ごたえがありました。全体の流れが絵に描いたように分かったね。これはおもしろい。カッティングシートは、まだまだ可能性があるかもしれない。というのは、今、建築とか立体物の世界ではね、よりもっと軽やかに出来ないかって所に皆向かって行っているんですよね。あまりにも20世紀が強過ぎちゃったから、強過ぎたものからどれだけ人間の心のほうに戻っていけるだろうかと考えると、重さだとか大きさとかじゃなくて、薄くて軽やかで霞んでてっていう、そんなようなものに移って行っているとも思うんです。そんな風潮の中、カッティングシートは相当な可能性を持ってることに、今日改めて気が付きました。

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【廣村正彰氏】

 

(永井)廣村さんは、サインデザインで非常に高品質な仕事をしてるんですね。第15回のサイン部門で金賞・銀賞・銅賞を独占してしまったというぐらい。廣村さん一人に独占させてしまうのはどうかっていうのもあったんだけど、やっぱりあまりにも優れてるので‥。廣村さんは、田中一光さんの事務所にいて、その後独立した方です。

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【永井一正先生のポスター】

 

(萩)CSデザイン賞のポスターとカタログの表紙を、10回近く担当なさっていますが、どういう思いでデザインされてますか?

 

(永井)最初はカッティングシートを意識してたんだけど、その内あまり意識しなくなったんで、空間とグラフィックというのをテーマに作ってます。

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【五十嵐威暢さん作のトロフィー】

 

(永井)五十嵐さんは、グラフィックデザイナーだけど、今は完全に彫刻家。このトロフィーは、まだグラフィックデザイナーの時に作ったもの。アルファベットなんかを、平面と立体に展開したりしてましたね。

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【CSデザイン賞の未来について】

 

(永井)明らかに、この二回位で、内田さんが前から主張なさってた建築素材としてのマテリアルになってきました。元来サイン的なものが多いんだけど、大きな面でカッティングシートを使って何かすることによって、建築の要素がもっと変わり得るのではないかって思いますね。

 

(内田)僕も同じような意見ですけど、建築とかデザインやってますと、モノがあっという間に巨大になれるとしたら、それは非常に魅力的なものですね。カッティングシートをつかえば、軽やかさを持たせながらググぐっとでかく拡大することが出来る。おそらくその辺を上手にみんな使い始めるんじゃないのかなっていうふうに思いますけどね。

 

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